2011年10月27日木曜日

「ミナガワトオル インタビュー」

混声三部合唱組曲「阿賀野川」20周年プロジェクトの発起人ミナガワトオル。
Swallowtail*Queenbeeのリーダーとして、また三川中学校卒業生としての視点から、ふるさと三川への想いを語ってくれた。
嬉しそうに話すその瞳は、まるで少年のように輝いていた。
今回のプロジェクトに込められたミナガワトオルのねらいとは。



今の自分が在るのはこの「阿賀野川」のおかげ。
だから、“何か恩返しがしたい”って思ったんです。


――とても壮大なスケールの企画ですよね。どうしてこれをやろうと思ったのですか?

はい。ちょうど1年前ですよ。
新聞を読んでたら、“第19回 合唱組曲「阿賀野川」を歌いつぐ会”の記事が目に飛び込んで来たんです。
“あー、もう来年で20年かぁ…。”って。
20年もずっと歌われ続けてるってすごいですよね。
ボクも中学生の頃は歌ってましたし、それが今14、5歳の中学生も同じように歌ってるんだ、と思うと嬉しくって。
あっ、この新聞の記事、まだ大事に持ってます(笑)。
今の自分が在るのはこの「阿賀野川」のおかげなんです。
ちょっとオーバーな言い方かもしれませんが、ずっと心の支えになってきました。
だから、“来年の20周年の節目に何か恩返しがしたい”ってその瞬間思ったんです。


――それが、バンドで演奏しようと?

うん。ボク大学生の頃にバンドを結成して。
何度かメンバーチェンジを経て、現在のSwallowtail*Queenbeeとなったわけですが。
実は、バンドサウンドで「阿賀野川」を演奏したいっていうのは密かに以前から企んでました(笑)。
たぶん、大学卒業して、新潟市にその活動の拠点を移したあたりからだと思うので、9年くらい前ですかね。
けど、その時はまだへたっぴだったし、経験も浅かったので、アレンジして演奏するだけの技術はなかった。
何より自分たちの楽曲を演奏する方が楽しかったから、当時はそっちに夢中でしたね。


――構想としては9年間も温めてた企画ってことなんですね。

そうそう(笑)。
“恩返しがしたい”って思った時に、“ココだ!今しかない!”って(笑)。
それから2カ月かけて合唱組曲「阿賀野川」を全曲アレンジしました。
とても楽しみながらの作業でした。
自分で作っておきながらいちいち興奮してましたね。
それはやっぱり、岩河三郎先生の作曲自体が素晴らしいからなんでしょうね。
そして、完成したデモ音源を持って、12月にメンバーを集めたんですよ。
“こんなことがしたいんだ。力を貸してくれー。”って。
そこで初めてボクの9年間温めてた構想を発表しました。


――なるほど。ところで、演歌歌手の葉月みなみさんはまだお話の中に登場してきませんね?

みなみは年が明けて1月から登場(笑)。
合唱曲をカヴァーするんだから、コーラスとかハーモニーは大切に再現したいなと思ってたんです。
で、ボクが歌うのはなんか違うかなと。
そこで、プロとして活動している葉月みなみの存在は間違いなかったですね。
もう10年来の親友なんですが、ひさびさに会った時に熱く語り合いまして。
口説き落としました(笑)。
ふたつ返事でしたよ。





歌でこんなにたくさんの人を感動させることができるなんて、音楽ってスゲー!と中学生ながらに思いました。


――ミナガワさんと「阿賀野川」との出会いについてお聞きしたいのですが。

ボクが小学校6年生の頃、“今、三川中学校でものすごい合唱曲を練習している、音楽の先生がめちゃくちゃ厳しいらしい”という噂は耳にしていたんです。
“中学校に上がったら自分も歌うことになるのか~、先生怖いのヤダな~”って正直思ってましたし…。
実際中学生になってからの音楽授業もあまり楽しくはなかったように記憶してます、初演のあの日までは。
平成3年新潟市音楽文化会館での初演、ボクはまだ1年生だったのでステージで「阿賀野川」を発表する先輩方を客席側で観てました。
もう、感動しましたね~。
鳴り止まない拍手喝采ってのを人生で初めて見たのもこの時です。
歌でこんなにたくさんの人を感動させることができるなんて、音楽ってスゲー!と中学生ながらに思いました。
たぶんそれからですよ、真面目に授業に取り組むようになったのって。


――思い入れのある曲はありますか?

そうですね、どれも思い入れは深いんですが、強いて言うなら「ふるさとの将軍杉」でしょうね。
5曲中一番たくさん歌ってます。
というのも、中学で一番初めに習ったのが「将軍杉」なんです。
さらにボクは2年生になると三川村混声合唱団(現阿賀野川混声合唱団)へ入団するんですが。
当時合唱団では「将軍杉」を特に力入れてやってまして。
お母さん方と一緒に歌うと、やっぱり女子生徒と違って声に深みもありますし、自分も上手になってる感覚がありました。
5周年記念CDで合唱団が歌う「将軍杉」が収録されてますが、この中にボクもいますよ(笑)。
だから「将軍杉」が好きなんでしょうかね。


――歌いつぐ会では「ふるさとの将軍杉」を最後に全員で合唱しますよね。

みんなで歌う「将軍杉」は迫力ありますよー。
曲自体すごくシンプルで覚えやすいし、何より明るい歌、そして口笛がいい感じですね。
吹くところが2箇所あって、2回目の方は吹き終わるとすぐ歌い始めなきゃいけないので、これまた難しいんですよ!
あと、岩谷にある巨木の里、将軍杉へはもう昔からよく足を運んでて。
その梢を見上げては口笛を吹いてますよボク(笑)。


――わかります。My BGM的な(笑)?

ははは…。そう(笑)。
でもね、大人になってから改めて「阿賀野川」を聴いてると、「悲歌」がいっちゃん(一番)いい曲です!
当時、中学生のボクには理解できてませんでしたが、友を失った悲しみのどん底から、希望の光を見つけて。
友の分まで強く生きていくという、そういう歌。
今聴くとホントに涙が溢れてきます。
合唱組曲「阿賀野川」の一番核となってる「悲歌」こそ、この先も大切に歌い継がれていってほしいです。



「阿賀野川」をさらに多くの人に聴いてもらい、共に歌い、そして感動を分かち合いたい。


――11月からいよいよレコーディングとお聞きしましたが。

そう。今は準備段階と、アレンジされた楽曲の最終チェックといったところです。


――どんな作品になりそうですか?

とにかく聴きどころは、合唱とロックの融合。
今まで誰も聴いたことのない不思議な(笑)音楽ジャンルだと思います。
音はバンドサウンドなんだけど、やってることは合唱っていう。
あと、Saeと葉月みなみ、女性ボーカル2人の歌にもぜひ注目してください。
このアレンジされた「阿賀野川」を歌いこなせるのは、日本全国探してもこの二人を除いて他にはいないでしょうね~。
もともとの5曲がそれぞれに違う色を持った楽曲なので、アレンジの方もバラエティーに富んでますよ。
だから聴きごたえもあるんじゃないでしょうか。
でもホント、気軽に聴いてほしいんですよね。
合唱の発表会って、歌う人も緊張しますが、聴く人も緊張しません?
なんか正座して聴かなきゃ、みたいな。
それがダメってことは全くないんですが、今回ボクらが提案する「阿賀野川」は、普段の生活をする上で気軽に聴けるところを目指しています。
例えば、ドライブ中だったり、料理を作りながらだったり、通勤・通学にだっていいでしょう。
気付いたら一緒に口ずさんでいるかもしれません。
ふるさと三川で20年間歌われてきた「阿賀野川」を、そうやってさらに多くの人に聴いてもらい、共に歌い、そして感動を分かち合いたいですね。
だからいち早く聴いてもらいたいのは、やっぱり地元阿賀町の人や三川中学校の卒業生かなあ。
逆に合唱×ROCK「阿賀野川」の方を先に聴いた人は、ぜひオリジナルの合唱曲の方も聴いてもらいたいし、阿賀町の大自然を肌で感じに来てほしいですね。


――阿賀町にはいいところがたくさんありますもんね。

うん。今の時期は紅葉も綺麗だし。
この「阿賀野川」の歌詩の中に出てくる風景とリンクするスポット、いっぱい知ってますよ!


――さすが!ミナガワさん地元大好きですね~(笑)。

密かに観光大使を狙ってるっけね!!(一同爆笑)
うそうそ(笑)。
でも自分のふるさとを好きじゃない人なんていないでしょー?
紺碧の大空~、肥沃の大地~、あたたかな人のこーこーろ~、ハイッ!


――…はい(苦笑)、歌うのはまた次の機会ということで…(笑)。では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

まず、今年の夏に発生した、新潟・福島豪雨によって被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
今回のボクたちが演奏する合唱×ROCK「阿賀野川」が、みなさんを元気付けるものになればと思って、一生懸命やらせていただきます!
また、ボクの大好きな地元をこうやって「阿賀野川」を通して紹介できるなんてとても光栄です。
嬉しく思います。
このプロジェクトに対して寛大なご承諾をくださった、作曲の岩河三郎先生、作詩の山本和夫先生のご家族の方、神田敏郎阿賀町長…。
そして、ご賛同、ご協力してくださってるたくさんの方々に感謝いたします。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
合唱組曲「阿賀野川」の名前を汚さないよう、心に響く素晴らしい作品にしたいと考えてますので、どうか皆さんのあたたかい応援をよろしくお願いいたします。




ミナガワトオル(本名:皆川 徹)
1978年生まれ
新潟県東蒲原郡阿賀町(旧三川村)出身
平成5年度三川中学校卒業生
Swallowtail*Queenbee ベース担当、リーダー

2011年10月22日土曜日

「第20回 合唱組曲『阿賀野川』を歌いつぐ会」

第20回 合唱組曲「阿賀野川」を歌いつぐ会が10月22日(土)、阿賀町文化福祉会館で開かれ、プロジェクトアーティストからは葉月みなみと三川中学校卒業生でもあるミナガワトオルが訪れた。

《 阿賀町文化福祉会館 》
  

 













《三川中学校生徒による手書きメッセージボード 》

















本番直前に実行委員長(3年)阿部大輔君と、副実行委員長(3年)阿部由梨江さんにお話を伺うことができた。

――いよいよもうすぐ本番ですが、練習で大変だったことはありますか?

阿部大輔君(以下、大):歌ってる時に動いて(身体を使って)表現するところがあるんですけど、男子の動きがなかなか合わなくて、その練習が大変でしたね。
阿部由梨江さん(以下、由):あと、表情です。表情豊かに歌うこと、例えば笑顔で歌ったりする切り替えが難しかったです。

――詩の勉強もされたのですか?

由:はい、詩の意味を理解する事は一番最初、1年生の頃にやりました。
大:「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」とか。それと、(羽越水害の)石碑も見に行きました。

――なるほど。それで曲の世界に入り込めるわけですね。では、本番に向けて一言お願いします。

大:今、とても緊張しているんですけど、悔いの残らないように精一杯頑張りたいと思います!
由:会場にいるみなさんを元気付け、笑顔になっていただけるような歌を歌う為に、全員で頑張ります!

















開会の挨拶では生徒会長(3年)五十嵐賢吾君が次のように語った。
本番に向け練習を積み重ねていく中、私たちは東日本大震災、新潟・福島豪雨という大自然の脅威を身をもって経験しました。
今回の経験を通して改めてこの組曲と向き合った時、これはまさに“希望の歌なのだ”と感じました。
私たちの想いが、みなさんに届きますように、今日は全員で精一杯心を込めて歌います――。

















今年のスローガンは「届けよう 希望の歌 ~20年分の思いとともに~」。
三川中学校全校生徒と教職員、阿賀野川混声合唱団とが一丸となって歌い上げ、来場した多くの観客を魅了した。
まず、阿賀野川混声合唱団による演奏発表で幕が開く。
そして本編。
合唱組曲「阿賀野川」は全5曲、約28分の物語である。
ふるさと三川の美しい情景描写から合唱は始まり、突然襲い掛った羽越水害、家族や友を失った深い悲しみへと進み、5曲目「光にむかって」で羽越水害の悲劇から立ち上がる村人のたくましい姿が描かれている。
今年は東日本大震災、新潟・福島豪雨という未曽有の災害の経験から、歌い継ぐ事への気持ちが一層強く表れていた。































ミナガワトオルは、久しぶりに聴く「阿賀野川」の演奏発表を、20年前の自分と照らし合わせていた。
「とても感動しました。
歌い継いで20周年…。
口で言うのは簡単だけれど、実際に毎年歌っている中学生や合唱団、それを支えている関係者の方々…。
みなさんの努力があってこそだと思います。
今よりもっと阿賀町全体で盛り上げて、これから20年、30年と歌い継いでいって欲しいと思います。」
と感想を述べた。
また、CDは何度も聴いていた葉月みなみだが、実際生の歌声を聴くのは今回が初めてだった。
「一生懸命歌う生徒さんの歌声や姿、また組曲に対するその姿勢に心を打たれました。
あたたかい気持ちになりました。
また来年も聴きたい!
私自身もとても勉強させていただきました。」
と、合唱×ROCK「阿賀野川」プロジェクトに対しての意気込みを見せた。